SSブログ

書く女 [観劇]


   

『書く女』

作・演出:永井愛
出演:寺島しのぶ(一葉) 筒井道隆(半井桃水) 八木昌子(母 たき) 小山萌子(妹 くに) 
    石村実伽(田辺龍子) 栗田麗(い夏) 江口敦子(野々宮菊子) 小澤英恵(半井幸子)
    向井孝成(斉藤緑雨) 中上雅巳(平田禿木) 杉山英之(馬場孤蝶) 細貝弘二(川上
    眉山) 

2006年10月2日(月)~15日(日)
世田谷パブリックシアター

 

「樋口一葉、恋して借りて書いた日々」
 
樋口一葉の遺した日記をもとに一葉を描いた作品である。
一葉といえば貧しい暮らしの中で作品を書き続け、若くして病のために世を去ったということ
しか知らなかった。作品も中学生の頃に「たけくらべ」を読んだきりというお粗末さ。

もちろん「永井流一葉」
 であるが、私にとっては文学史に出てくるだけの存在だった一葉という
名前が、生き生きとした実体をもった一人の女性として感じられる存在になった。

女性に教育は不要という母の方針から一葉は高等小学校を4年で退学、後に歌塾「萩の舎」に
入塾、高等教育を受けた女性たちの中にあっても次第に頭角を現すようになって行く。
兄の死によって一葉は樋口家の戸主となり、母と妹との暮らしを支えるために働き続ける。

仕立てや洗濯の仕事をしながら小説家を志す一葉は友人のつてで朝日新聞に連載小説を書い
ていた半井桃水に指導を願い出る。やがて桃水と一葉は惹かれあうようになるが、戸主である
自分は嫁ぐことができないと、桃水との間には一線を画した生き方をつらぬく(永井流解釈)

雪の日のエピソードや桃水との回想シーンなど、寺島しのぶはどちらかといえば苦手な女優さん
だったが、さすがに上手いと感じた。  桃水の筒井道隆も清潔感があってよかったが、やはり
寺島しのぶに押され気味な印象を受けてしまう。

作品は少しずつ認められて行くが生活の苦しさは相変わらずで、一家は吉原近くで荒物屋を
開業。一葉は遊郭で働く女性たちとも交流を持ちながら、自分が生きているこの時代のことを
女の目を通して書くことに意味があるのだと考える。

やがて一葉を慕って若い文士たちが彼女の周りに集まるようになる。
彼らとの話の中から「たけくらべ」のアイデアが浮かぶくだりなどはおもしろい。
斉藤緑雨らとの交流の中で、憑かれたように作品を発表し続ける晩年の一葉。
「頭が痛い 頭が痛い」と連発しながら。


女性の地位が低かった時代にあって男性と互して書き続けた一葉の存在がやがて次の時代
を拓いて行った。
女性作家として一葉の先を歩き、結婚・出産を経ても書き続けた田辺龍子をはじめ、たくましく
したたかに生きる一葉の母と妹など、登場する女性達の描き方が生き生きとしておもしろい。


休憩を除いて3時間15分。
二部は少し冗長な感じがしたのでもう少しコンパクトでもよかった気がする。
森鴎外や幸田露伴などのなじみのある名前に混じって初めて聞く文学者の名前も多く、
文学史の知識があればさらに深く楽しめたであろうにと残念に思った。

 

『書く女』については柴犬陸さんのブログにすばらしい記事がありますのでそちらもどうぞ
ごらんになってください。


nice!(2) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 2

栗羊羹(美鈴)うさぎとうさぎ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。