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朧の森に棲む鬼 [観劇]

        
『朧の森に棲む鬼』    Lord of the Lies

        

作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:市川染五郎(ライ) 阿部サダヲ(キンタ) 秋山奈津子(ツナ) 真木よう子(シュテン)
    高田聖子(シキブ) 粟根まこと(ウラベ) 小須田康人(サダミツ) 
    田山涼成(イチノオオキミ)
 古田新太(マダレ)  他劇団☆新感線

2006年12月29日(金)~2007年1月2日(火)~27日(土)     
新橋演舞場

 

         
         

今年初めての観劇。演舞場の1月公演というだけで自然と華やかな気持ちになるから不思議。
『メタルマクベス』から半年ぶりの劇団☆新感線だが、いのうえ歌舞伎としては『吉原御免状』
以来一年ぶりとなる。

戦を続けるエイアン国とオーエ国。
生まれながらの嘘つき、舌先三寸で世の中を渡ってきたライが弟分のキンタを連れて朧の森
に現れる。いにしえの神々が棲むというその森でライの前に森の魔物オボロ達が現れる。
彼らはライの望みを叶えてやるかわりに命をよこせと取引をもちかける。
同意すればライの舌が動くようにライの剣も動くようになる。
そしてライが自分を殺す時、ライの命はオボロたちのものになると不思議な言葉とともに取引は
成立する。魔力を得た剣の動きに振り回されるようなライの動きがクネクネとおもしろい。

「エイアン国の王になる」それがライの望みだった。
オボロたちの予言通りにエイアン国の四天王の一人を殺し、それをきっかけに嘘と血に染まった
剣でライは望みを叶えてゆく。夢の実現のためには手段を選ばぬ根っからの悪人ライ。
「血人形の契り」を交わしたオオエ国の将シュテンに「外道」とののしられても、「これが本道だ。
夢を叶えるために俺は俺の道を真っ直ぐに行く(大意)」と言い切る。

やがて裏社会を仕切るマダレと手を組み検非違使のツナや大王の愛人シキブに取り入り、権力
への階段を登って行く。シキブを使って大王を殺し、あとひと息というところからライの転落が始ま
って行く。
「血人形の契り」の意味するものがわかってからのライの悪人ぶりはさらにすさまじい。
「鬼よりも怖いもの、それはこのライさまだ。この剣が舌先どおりに動くものなら、舌の根が乾かぬ
うちはこの剣は血塗られる!」
マダレをもってして「俺よりも悪いヤツだ」と言わしめたその姿は凄みが感じられて美しいとさえ
思ってしまう。

「自分で自分を殺すことなどありえない、従って俺は死なない」と豪語したライもキンタに情けを
かけたことが廻りめぐって己を破滅へと追い詰めてしまう。<剣=己の舌>がこの場面になって
意味を持ってくる。

最後の大掛かりな水の仕掛けの中、「真っ赤な血でこの森を嘘の森に染めなおせ!それが
俺の最後のペテンだ!(大意)」と叫びながら死んでいったライの魂は鬼となって朧の森に
棲み続けているのかもしれない。



 

やっぱりいのうえ歌舞伎はおもしろい
脚本・衣装・役者のすべてが噛み合ってみごたえ充分。中でも衣装がよいと思った。
(サダミツなぞは歌舞伎そのものの衣装とメイクだし)

リチャード3世と酒呑童子伝説を下敷きに作られていので、ライも源頼光(らいこう)から
とっているそう。嘘ばかりで世の中渡っているからてっきり<lie>だと思っていた。
他にキンタは坂田金時、ツナは渡辺綱、ヤスマサは藤原保昌などそれぞれ由来がある
そうで、知っているとさらにおもしろく観れるかも。

染五郎はもちろんだが古田新太の貫禄のある芝居の中にチラッと見せるおかしさがたまら
ない。秋山奈津子・高田聖子は女の哀しみを感じさせてうまいなぁと思う。
真木よう子が少し弱いと感じたが周りが周りだけに仕方が無いかも(でも美しい)

最も印象的だったのが阿部サダヲ。身軽な殺陣に加えて花道付近での見得もチャーミング。
さらには客席も使ってのパフォーマンスもありの大活躍。
ライに裏切られる場面ではジーンとさせられ、後半改めての登場以降が殺陣もさえわたる。
テレビの「ピン子さん」もよかったけれど、やはり舞台の人だなぁと再認識。

もう一度観たい! と思える作品だった。(二幕 休憩を含めて2時間半)


        
パンフはカレンダー付きの豪華版。でもこのカレンダー(右)写真がとっても怖い。
一緒に行った友人は一人暮らしなので恐ろしくて使えないと言っていた。
一人暮らしでなくても怖いよぅ。
カレンダーなしでいいから半額にして欲しいと思った人はかなりいるんじゃないの・・・?

 

 

 


        
「ウエスト」でケーキ(もちろんバタークリーム♡)を食べて演舞場に向かう途中、新橋近くの
歩道橋の上で。  ビルとビルのすき間から見えた東京タワー。普段は通らない道なので
全然知らなくて、何だか見えただけでうれしい気持ちになってしまった。なかなかにきれい。


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