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MYTH(ミス) [観劇]

  

青山円形劇場。
鈴木勝秀作・演出 佐藤アツヒロ 篠井英介 陰山泰 中山祐一朗

中央に円形の舞台。青と黒の模様が描かれ、黒い穴がひとつ。
ロッキングチェアと黒いスツール。
青い光の中、静かにゆれ始めるロッキングチェア 幕開き。 

ほとんど交渉のなかった父親の死によって遺産を相続することになった息子。
自分が生を受けたことに意味を見出せず、ただ1人の友人しか持たない孤独な
彼には父の残した家は何の価値も持たないが、建物を訪れた彼の前に幽霊と
なった父親が現れる。

「終わり」とも言える父の死から息子は初めて父親との関わりをスタートさせる。
生きることに意味を見出せず人との関わりを極力排して生きている息子に、父は
「繭の中から出よ」と訴える。自分の生は父、祖父と先の人たちからの流れの延長
にあるのだ、孤独に生きるなんてことはできないのだと。

やがて自らの意志で父を葬り去ることで彼は改めて自分の人生を始める。
抱き合い、息子に思いが伝わったことを確かめて静かにくずおれる篠井さんの表情
が印象的でした。

ロッキングチェアに膝を抱えてうずくまる息子の姿は繭の中に閉じこもったままの彼
の生き方を表しているように思えます。最後父の遺した物の中から絵と椅子だけを
選び、「これは僕が」とロッキングチェアを抱えて家の外へと向かう彼の姿に観る側
も安堵の気持ちを抱きました。


  『MYTH には神話、伝説、つくり話、架空の人という意味がある。
   人間は、生まれてきたからには、孤独ではない。』(チラシより)

人は人生で出会う数限りないMYTHを見極め、自分の生を実のあるものにする。
「人生はローンを返すようなもの。なぜって私たちは生まれた時にすでにすべてを
与えられているのですから(大意)」
弁護士のせりふが印象に残りました。

黒と白 光と陰 生者と死者(実体のない者)
シンプルな舞台装置を補うように照明がとても効果的に使われています。
1時間30分余りの上演時間でしたが、集中して観たためか短いとは感じませんで
した。 観終わった後もじわじわ効いてくる作品です。


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