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あわれ彼女は娼婦 [観劇]


     

あわれ彼女は娼婦

作:ジョン・フォード 小田島勇志訳  演出:蜷川幸雄
出演:三上博史 深津絵里 谷原章介 石田太郎 
立石凉子 梅沢昌代 高橋洋 他

Bunkamura シアターコクーン


3月の先行で早々とチケットを確保したのに引き換えてみれば1階最後列 (;一_一)
(いくら劇場がそう広くないとはいえ最後列っていうのは先行としてはあんまりじゃないの)
コクーンに行くたびにかなり衝撃的なこのポスターがバァ~ンと貼られているのを
見て、毎回ドキッとしながらもキャストに惹かれて楽しみにしていました。

初めて愛した相手が兄であり妹であったことから始まる悲劇です。
他人は騙せても、自分を欺くことはできても神にすべてを隠しおおすことはできない。
罪をあがなうために最悪の結末へと向かう…そういう予想をしていたら少しばかり違い
ました。
近親相姦という罪を犯しているジョバンニとアナベラがもっとも強い非難をうける存在で
あるべきなのに、登場人物のほとんどが自分の欲望に流されたいいかげんな生き方を
しているのです。

娘の妊娠を知った父親は即座に別の男(ソランゾ)と結婚させて世間体を取り繕うと
するし、相手に選ばれたソランゾは社会的には問題がないものの、心からの愛情で
女性を愛することを知らず、あげくに長い間ずっと不倫のドロドロを引きずっている。
アナベラが自分に愛情を抱いていないことを承知の上で打算から結婚するが、次第に
お腹の子供の父親に嫉妬を覚え、真実を知った時ジョバンニを陥れようと画策する。

正義を遂行するべき枢機卿も堕落しているし、さまざまな人物の間に恨み・憎しみ・
復讐の負のベクトルが生じていて、そんな中にあってジョバンニとアナベラの愛情は
道徳の枠から外れたものであるのに、観る者に真っ直ぐに伝わってきます。

三上博史の苦悩する姿も、谷原章介のいかにも貴族ふうな様子もよかったのですが
やはり深津絵里が印象に残りました。
ジョバンニに愛を打ち明けられる前の清らかな様子。愛を確かめ合った後の幸せと
恥じらいの混ざった様子。ソランゾに身ごもっていることを知られた時の母親の顔。
そしてジョバンニの腕の中で死んでいく時の哀しみと幸せのないまぜになったさま。

凛とした声で後ろまできっちりとせりふが届きました。
白を基調にした衣装も品があってとても合っていたと思います。

中世風の石造りの建物のセットに無数の細くて赤いロープが下がっています。
運命の糸なのかそれとも禍々しい血の色を暗示するのか…
シンプルな建物を内からと外から、カーテンをうまく使って表現していました。
光の使い方も美しい。

冒頭、舞台中央に大きな馬が座っていたので、「わっ、ニナガワ!」と感じたのですが
それ以外は奇抜な演出もなく最後までふつ~に観れました。
(ご本人がPAの後ろにずっと座っていらっしゃいました。いつもそうなのかしら)


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