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戸惑いの日曜日 [観劇]


「アパッチ砦の攻防」より『戸惑いの日曜日』

           

脚本:三谷幸喜
演出:佐藤B作
出演:佐藤B作 あめくみちこ 西郷輝彦 細川ふみえ 中澤裕子 小島慶四郎
    小林十市 佐渡稔 市川勇 小林美江 山本ふじこ 角間進 市瀬理都子
    斉藤レイ

2006年8月31日(木)~9月10日(日) サンシャイン劇場

 

1996年に三谷幸喜が劇団ヴォードヴィルショーに書き下ろした「アパッチ砦の攻防」を
もとに今回加筆されての上演だそう。
以前の作品は数年前にビデオで観てそのおもしろさに大笑いした記憶がある。

タイトルに「アパッチ砦」とあるのにマンションの一室でのお話。観終えてからはその意味
がわかるのだが、なるほどインディアンものだと受け取られかねないタイトル。
それで「戸惑いの日曜日」と変えられたようだが、「アパッチ砦の攻防」のほうが内容に
合っているように思う。確かに攻防とよぶにふさわしい事態が繰り広げられる

幕が開くと客席から拍手が起きたのにちょっと驚く。(軽演劇ならではのこと?)

舞台は代々木上原にある高級マンション「フォートネス・アパッチ301号室」
鏑木(佐藤)は事業の失敗から4日前にマンションのこの部屋を手放し、現在はフィリピン人
の女性とアパート住まい。
そんな彼の元に別れて暮らす娘(中澤)が婚約者(小林)と結婚の報告にやってくるという。

落ちぶれた姿を見られたくない鏑木は301号室に電気工事業者を装い入り込む。
なんとか住人の隙を狙って、今も自分の家だと見せかけて娘の婚約者との対面を果たそう
とする。
もとよりそんな身勝手な計画がうまく行くはずはなく、うそがうそを呼び、現住人と鏑木一家、
さらにはマンションの住人、不動産屋までが入り乱れててんやわんやの大騒ぎが始まる。

シチュエーションコメディなので場面は301号室のみ。人が出たり入ったり、すれ違いと
せりふのおかしさで話が進んで行く。
同じせりふが登場人物によって全くちがう意味として解釈され、それによって起こる勘違い
の行動がおかしさを呼ぶ。

鏑木のうそによって振り回される鴨田役は西郷輝彦。初演では伊東四朗が演じていたので
最初は無意識に比べてしまった。しだいに慣れたけれど。
鴨田という男は自分の家に次から次へとわけのわからない人物がやってきて騒ぎを引き起こす
のに戸惑うものの、キレたりしない。ちょっとズレているその人間性が可笑しさをさそう。

鴨田の妻役の細川ふみえは天然っぷりがかわいい。以前のCMを思い出させるようなシーンも。
あめくみちこは今回は別れた妻の役(前回は鴨田の妻)だが、きっぷの良さと女っぷりが素敵。
佐藤B作との呼吸もさすが。

でも一番うまいと思ったのはフィリピン女性のヴィヴィアンを演じる小林美江。もう最高
ヴィヴィアンが登場する二幕目は客席の笑いが大きくなっていたように思う。
今までは声だけの出演で今回初めて登場する人物とのことだがこれ大正解。
(チラシの配役では斉藤レイになっていたようだが途中で変更になった…?)

もちろん佐藤B作はいつもながらの大汗かいての大熱演。
子供の頃に松竹新喜劇でよく観た小島慶四郎を生で観られたのもある種の感慨を覚える。

考えてみれば登場人物のほとんどがウソをついたり目的を果たすために人をだましたりして
いる。鏑木と元妻、鴨田の妻と娘、不動産屋、婚約者と両親、マンションの隣人夫婦、鏑木の
恋人。
しかしながらそのウソは不愉快なものにはならず、そこから雪だるまのように膨れ上がり
変化する状況が笑いをさそい、うその向こうにちらっと顔を出す真情がよい。


自分の家をもつことに全力を傾けていた鴨田は、形にとらわれ妻のこころを思いやることを
忘れていた。他方、形としての家はなくしてしまったが、家族の絆、愛情はきちんとはぐくんで
きた鏑木。 ちょっとホロッとさせられる部分も。
このあたりが三谷脚本の真骨頂ではないか。
部屋に置かれている小道具が効果的に使われているのおもしろい。


最後二人並んで「ウエストサイドストーリー」を観る鴨田と鏑木。
最後のオチも記憶にある初演と同じもの。あわてる二人がおかしい。

上演時間は休憩15分を含め約2時間50分。一部が少々冗長に感じたが二部のテンポのよさ
で充分楽しめた。演技のオーバーな部分が多少気になるところもあるが、それを差し引いても
観る価値はあると思う。

    ********
今日、小島慶四郎演じる電気屋さんをテレビの場所に案内する時に佐藤B作が上手と下手
を勘違いして、玄関に連れて行こうとしてアドリブで小島に注意されていた。
笑いでごまかしてたけどあれは本当に間違えた…? (^.^) 

 

 折込チラシの中に三谷がヴォードヴィルショーのために書いた新作「エキストラ」が。
チケット争奪戦は必至、恐らくね。

          

 

***************

最後に、鴨田といえば・・・
同じく三谷幸喜作の「古畑任三郎」の中で鴨田なる人物の出てくる回があります。
おしゃべりなあまり、自分のことを話しすぎて殺されたタクシー運転手。
最後のシーンで古畑が「ところであなた誰?」と尋ねるのですが、今回の舞台でも
鴨田が「あんた誰?」と何度か尋ねます。
他にも何度か鴨田を使ってるようで、三谷さん 鴨田という名前好きなのかしらん?

 


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