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賭けること [観劇]


コットンクラブプロデュース9 『賭けること』

        

台本:中西良太
演出:中嶋しゅう
出演:河西健司 阿知波悟美 中西良太

2006年9月13日(水)~14日(木)
亀戸・カメリアホール

 

河西健司・中西良太と聞いてその顔をすぐに思い浮かべられる人はそう多くないのではないか。
かつての私がそうであったように。
二人ともドラマの脇役としての姿しか見たことがなかったが、コットンクラブプロデュースという
ユニットでコンスタントに舞台を続けている人たちであることを知ったのは2年前。
「奪うこと」を観たときだった。

劇場に行ったきっかけが何だったのか、もう覚えていないけれど、観終えた後の心が柔らかく
なるような感じは今も覚えている。

今回は北海道の演劇鑑賞会のための再演だそうで、東京では2日間の公演のみ。
仕事を終えてからの亀戸は遠かった…! けど行ってよかった。そう思える内容だった。



     * * * * * * * * * *
あるマンションの寝室。ブラインド越しのオレンジの光は夕刻のそれ。
縛られたこの家の主婦とおぼしき女性と覆面の男。銃を構えている。逃走途中にたまたま
この部屋に逃げ込んだ強盗らしい。
そこに妻の知らせで200万の現金をおろした夫の宮本(河西)が帰宅。
強盗が現金に気をとられている隙に夫を見捨てて妻だけが逃げてしまう。

パトカーが包囲する中取り残された宮本は強盗(中西)と対峙することになるが、この強盗
ちっとも怖くなくてむしろいい人のように見える。 人質を縛り上げながらも妻からの電話に
「今夜はちょっと遅くなるけど帰るから」なんて答えてる。 

ストックホルム症候群という言葉があったっけ。
置き去りにされた宮本は妻の本意は夫が強盗に殺されることで財産も浮気相手も手に入れる
ことにあるのではと疑いを抱く。そして強盗(名前は田辺)の身の上に同情を感じる。
ガソリンスタンドの経営者である田辺は従業員の給料が払えずに強盗を働いたというのだ。

宮本の提案で二人は入れ替わることにし、もう一人の人質(若い女性警官希望)と交換に
田辺を逃がす計画を立てる。ところが要求通りに
やってきた女性警官はどう贔屓目に見ても
若いとはいえないオトナな女性、入江(阿知波)

二人は入江の前で入れ替わった振りをするがすぐに化けの皮がはがれてしまう。
宮本は妻への復讐、入江は長年の不倫相手である副署長へのうらみ。
出口の無い状況の中、力を合わせて田辺を無事に逃がし、ひいては自分達の思いも果たそう
とする。ああでもない、こうでもないと方法を模索する中でお互いの状況や恋愛感を話す3人
のやりとりがとてもおもしろい。 

生きてるとそんなことってあるよねぇ…うんうん。そう言ってみたくなるような自然な流れが
舞台上にある。(前日にマシンガントークのように声高にせりふを言い続ける作品を観たばかり
だったのでよけいにそういう印象を受けた) これってまさに息の合った役者の力だなと思う。

宮本は田辺に200万を渡し、最終計画を詰める。
気がつけばもう夜明け。入江が用意した朝食を3人が食べるシーンがクライマックス。
床に座ってご飯と味噌汁。一枚の干物を分けながら声を上げて泣く三人。
「ごはんが美味しくて。食べられることがうれしくて」  わかる。

「入江よし子、女性警察官としての最後の敬礼であります!」
真情がにじむ泣き笑いのままマンションを出て行く入江。
残された二人は人生最大の大博打を打つための最後の仕上げにかかるがその姿は最後まで
おかしくて、笑いの中暗転。

 


     * * * * * * * * * *
いっぱい笑ってほろりとして、あったかい気持ちでホールを後にした。
こういう作品にたまに出会えるからやめられない。

 


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