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タンゴ・冬の終わりに [観劇]

 
     

『タンゴ・冬の終わりに』

作:清水邦夫
演出:蜷川幸雄
出演:堤真一 常盤貴子 秋山奈津子 段田安則 毬谷友子 高橋洋 月皮悠貴
    岡田正 塚本幸男 新橋耐子 沢竜二 他

2006年11月4日(土)~11月29日(水)
Bunkamura シアターコクーン

 

映画館のスクリーンに向かって熱狂する百名近くの若者。こぶしを突き上げ、立ち上がり、叫び
転げまわる。光・・・!
彼らの熱狂が過ぎ去った後には寂れた映画館のシートに身体を丸めて眠る男。

彼の名前は清村盛。有名な俳優であったが3年前に突然引退し、日本海に面した町の映画館
である生家に舞い戻り、後を追ってきた妻のぎんと共に暮らしている。
一年前から盛は少しずつ精神を病み始めており、彼の中で日ごとに幻の孔雀が大きくなってゆく。それを心を痛めつつ寄り添いながら見守るぎん。

ある日盛からの手紙で元恋人の名和水尾と夫の連がやってくる。
しかしその手紙は盛のためを思ってぎんが書いたものだった。
水尾を見ても盛の記憶はよみがえることはなく、かつて演じた役のせりふを繰り返すばかり。
そして初めて出会ったように水尾に関心を示し始める盛を痛みを持って見つめるぎん。

繰り返されるカノンとジムノペティの旋律に乗せて美しくも胸が痛くなるような時間が過ぎてゆく。


水尾とのやりとりの中で盛は言う。

「彼はやはりきみを愛していた」
「しかし、ぼくにいわせれば、結局彼は俳優として人間としてひ弱すぎたんだ、いずれ俳優を
やめて消えていったはずだ・・・」

狂気の淵にありながら、皮肉にも自身のことを分析してみせる盛。
かつての演じた芝居で流れたタンゴがひびき、二人は手をとって踊り始める。  やがて
水尾の手を離し、連に委ねながら階段を登る盛。待ち受けるぎんに手をのばし、倒れこむ。


水尾と連が東京に発つ時、盛はついに映画館の座席の下から孔雀を見つけ出す。が、それは
古い座布団。
そっと座布団を抱え、冬の終わりから春の間だけ見えるという孔雀のエメラルドラインに魅せられ
る盛の姿にぎんはもはや自分の場所はないということに気づく。
幻の孔雀が相手ではどうしようもないと。

あきらめきれずに真正面から盛に間違いを正す水尾。座布団を奪う。
発作的に水尾の首を締めた盛は一瞬正気に返るが、彼の頭の中には再びタンゴが鳴り響き
見えないパートナーと踊り始める。

次の瞬間駆け寄った連のナイフで刺される盛。
しかし彼は踊を止めない。白い鳥のように見えないパートナーと踊り続け、やがて階段にくずれ
落ちる。後ろの壁が崩れ、桜の花びらが吹雪のようになだれ込んでくる。
上空からは無数の孔雀の羽、羽、羽・・・

廃墟と化した映画館の中でぎんの独白。

そして再びなだれこんでくる冒頭で見た観客たち。スローモーション。

 

観終えた時に思わずため息がでた。
どちらかというと苦手な「蜷川色」もあまり感じられなかったし、戯曲の雰囲気がそのまま
出ていたように思う。

「将門」に続いて堤&段田を観ることができたのもうれしかったし、抑えた演技の秋山奈津子
もとてもよかった。
「あわれ彼女は娼婦」で初見だった高橋洋は今後も要チェック。
毬谷友子はもう少し見たかった。あれだけではもったいないな。
音楽は歌詞は抜きの方がよかった気がした。
でもこの作品、今年観た中ではベスト3に入るかも・・・

 

 


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