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犬は鎖につなぐべからず [観劇]


          

『犬は鎖につなぐべからず~岸田國士一幕劇コレクション~ 

作:岸田國士 (犬は鎖につなぐべからず、隣の花、驟雨、ここに弟あり、屋上庭園、ぶらんこ、紙風船)   
潤色・構成・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
振付:井手茂太  
和装:豆千代
出演:松永玲子 みのすけ 村岡希美 長田奈麻 新谷真弓 安澤千草 廣川三憲 藤田秀世 
    植木夏十 大山鎬則 吉増裕士 杉山薫 眼鏡太郎 廻飛雄 柚木幹斗 緒川たまき
    大河内浩 植本潤 松野有里巳 萩原聖人  
2007年5月10日(木)~6月3日(日)  青山円形劇場

 

雨の中表参道まで遠征してまいりました。
3月初めの
チケット確保時にはまさか遠征しなければならぬ状況になるとは思いもしなかったですが。
ナイロン100℃30th sessionと銘打たれているものの、今回はケラ氏オリジナル作品ではありません。
先の「禿禿祭」でもとりあげた岸田國士の作品を元にケラ氏が『同じ町内で起きた物語』という設定を作
りひとつにまとめたものです(折込解説による)

岸田國士(きしだくにお)は“演劇界の芥川賞”といわれる「岸田國士戯曲賞」にその名前を残す、日本
の演劇に多大な功績を残した人であり、岸田衿子・故岸田今日子の父親です。
『日本で最初に近代的なせりふ劇を書いた劇作家で約70年前に書かれた彼の戯曲が、現在の日本
演劇の土台になっていると言っても過言ではない程、のちの日本演劇に計り知れない影響を与えた』
(折込解説から)

岸田國士賞の名前は三谷幸喜の「オケピ!」受賞で初めて知りました。以後倉持裕、宮藤官九郎など
も受賞したのは記憶に新しいところ、ケラリーノ・サンドロビッチも1999年に「フローズン・ビーチ」で受賞
しています。

 

          
           
           ※ナイロンのチラシは毎回凝っていて好き

 

今里家の飼い犬をめぐるドタバタ騒ぎ(犬は鎖につなぐべからず)を縦糸にその他の話を横糸にからめ
るという形になっていて、一つずつのエピソードを味わいつつ全体としてまとまっている印象を受けました。

夫婦、兄弟、恋人、親子などが日常にかわす会話が観ている者にさまざまなことを想起させ、それは観る
ものの立場・状況によっていかようにも受け止められ、それがおもしろく味わい深いと思いました。
そして戦前の山の手言葉というのでしょうか、当時の言葉遣いが新鮮で少し前まではこんなに美しい
日本語が普通に使われていたのだと改めて気づかされます。

中でも「驟雨」「隣の花」に出てくる年輪を重ねた夫婦の会話と視線、表情を楽しみました。
演じる人たちがとにかく上手い。

出てくる女優さんたちの着物が印象的です。昭和初期の香りを残すクラシックなものから現代的な
ものまでそれぞれの着手に合わせたアレンジがなされていて素敵でした。

客演の緒川たまきの一見控え目のようでいながらその実流されない女性、少し前までは確かに存在
した日本の女性の姿が光りました。たおやかで透明感のある美しさ。立ち居振る舞いがとても美しく
以前「ワニを素手で捕まえる方法」の時にはさほど強い印象がなかったのに、今回改めて驚きました。
「ぶらんこ」で萩原聖人に寄り添うシーンはとりわけ美しい。
村岡希美も好きな女優さんです。美人じゃないのにきれい。
松永玲子は今回は素敵な着物とヘアスタイルで黙ってたっていると当時の絵に出てくる女性みたい。
なのにやはり笑いのパートを担当しているのです。
いずれの女優さんも安心してみていられました。今回は男性よりも女性が際立っているように感じます。

場面転換は井手茂太振付によるダンスによって行われます。実は私はこの井手氏のダンスがどうにも
苦手なので、場面が変わるたびに違和感を覚えてしまいました(恐らく少数派だと思いますが)
それを除けば、走る走る今里親子の姿や舞台を回転させることでテンポよく話が進み、3時間余りを
退屈させずに見せてくれます。
元の戯曲は未読でしたがケラ作品として受け止め充分楽しむことができました。

 


劇場入りするときにはほとんどやんでいた雨が終演後外に出るとまた振り出していて、「驟雨」の
ラストの雨音が重なって聞こえてくるような気がしました。
いつものナイロン作品とは少し違いましたが、これを踏まえて次回はどんな傾向の作品を見せてくれ
るのか、まだまだナイロンを楽しみに観続けたいと思います。


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