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狐狸狐狸ばなし [観劇]


トム・プロジェクトプロデュース  『狐狸狐狸ばなし』


  (東京公演チラシ)                       (兵庫公演チラシ)

作:北條秀司
演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
美術:加藤ちか  衣装:小原敏博
キャスト:篠井英介(おきわ) ラサール石井(伊之助) 板尾創路(重善) 六角精児(又市)
      真山章志 大出勉 廣川三憲 野間口徹 小林俊祐 皆戸麻衣 植木夏十 サチコ
      小林由梨

2007年8月19日(日) なら百年会館大ホール

 

3年ぶりの再演です。本多劇場で9月1日から9日まで上演されますが、上京日程と合わず一旦
はあきらめました。ところが東京に先立ち地方公演が行われ、しかも奈良公演が帰省とうまく
重なったので思いがけず観ることができました。
6月頃にもらった本多劇場のチラシは前回公演のものと同じです。大阪でもらった兵庫公演のもの
は前回の舞台写真を使って裏面には解説もあってこちらの方がよくできています(兵庫芸術文化
センター主催)


1961年に北條秀司によって書かれた戯曲をケラリーノ・サンドロヴィッチが手を加え、演出した作品
です。主な出演者、美術、衣装もほとんど同じです。おきわの篠井英介は前回は短髪のまま演じて
いましたが今回は女性らしいかつらを使用。さらに色っぽくなっています。

騙したつもりが騙されて、男と女の化かしあいは所詮狐と狸のようなもの。どんでんがえしがおもしろ
い大人向きのちょっとブラックな喜劇になっています。45年も前に書かれた作品ではありますが、男
と女の関係はいつの時代も変わらないもの。
自殺を図って入院中の男の見舞いにきた先輩が「狐狸狐狸ばなし」を語るという形式に変えたようで
す。二重構造になっているので初めて観ると最初はちょっと混乱するかも。個人的には原作だけでも
今の時代でも充分おもしろいのではないかと思いますが。

 

          

元役者で今は手ぬぐい職人をしている伊之助は妻のおきわが好きで好きでたまらずマメマメしく世話
を焼く毎日。ところがおきわは近くの寺の住職の重善(善が重なるなんて名前とはかけ離れたとんでも
なく悪い男)と不倫中。
ところが近頃重善には器量はよくないがお金持ちの「牛娘」との縁談が持ち上がっているらしく、おきわ
に冷たいそぶり。問い詰めるおきわに重善は伊之助を殺せとそそのかし、おきわはてぬぐいを染める薬
をふぐ鍋の中に入れて伊之助を毒殺してしまう。
知らぬ顔を決め込んで重善にお経をあげてもらった後お寺に泊り込んだおきわのもとに翌朝手代の又市
が伊之助が生き返って呼んでいると告げに来る。
あわてふためくおきわ。確かに殺したはずなのに…!?

疑心暗鬼に捉われはじめるおきわ。「焼かれても殺されてもあんたからは離れまへんで~」とますます
しつこさを増す伊之助に恐々とするおきわ。
「もういぺんあいつを死なせてみよう」
重善、又市、おきわ、甚平、寺男たちが集まって伊之助を待ち伏せし、又市が包丁でメッタ刺しにした
後沼に沈めてしまう。今度こそはと胸をなでおろす面々。

ところがおきわの前に再び現れる白装束の伊之助。もう何がなんだかわからぬまま、さらに重善が
牛娘と別れていないことを知っておきわの気持ちは憎しみに変わる。てぬぐい染の薬を重善の酒に
入れて飲ませるが死ぬどころかちっとも効かない。ようやくおかしいと気づく二人。
薬はニセモノで実は伊之助は元役者の本領を発揮、又市と共謀しておきわたちを欺いていたのだった。
二人にお灸をすえる伊之助。恐怖に震える姿を見て溜飲を下げる。
そしておきわの精神は限界を越え、もはや正気にはもどることはなかった。

3ヵ月後、ようやく自分のものになったおきわの世話を甲斐甲斐しくやく伊之助の姿があった。
狂気に陥ったせいで間男の罪に問われることもなくすんだとすっかり安心した伊之助が又市と遊びに
出かけたある日。
近所の甚平に重善との連絡を頼むおきわの姿があった…

 

          

おきわたちの騙し合いと並行して入院中の男と先輩も男の妻をめぐって騙し騙されの関係が進行中。
いずれの時代にも男と女は狐と狸、どちらの勝ちかは最後の最後までわからない…?

ラサール石井が蛇のようにしつこい伊之助をコミカルにいやらしくなく演じていて楽しそう。大阪弁
の女っぽい亭主がさまになっています。篠井英介は前回よりもさらにあでやかで美しく、最後の笑
いにはぞくっとするものがありました。篠井キャラ全開の女っぽさです。
濃い二人に比べると板尾創路は表情を変えることなくクールに悪い坊主を演じていてこれはこれで
なかなか。

舞台は柿色の壁とこげ茶の柱と落ち着いた色調。小道具は落ち着いた青で統一。衣装も着物を
ベースに現代風にアレンジされていますが違和感はなく、かえって普遍的な話として捉えること
ができる効果を生んでいると思いました。


 

 


              
会場の「なら百年会館」  奈良市の市制100年を記念して作られたホールで遠くからでもひときわ
目立つユニークな形の建物です。 磯崎新設計、船をイメージしているそうです。

 

 

          

ロビーを入ったところ。 まだこのホールができたばかりの頃にコンサートを聴きにきたのですが
席が悪かったのか音が二重に聞こえてつらかった記憶があり、以後あまりよい印象を持てないホー
ルです。大規模な催しの時は階段上にある入口が狭いため入場に非常に時間がかかったり、形と
使いやすさは別物だとここに来るたびに感じます。
今回は8月に入ってからチケットを購入したにもかかわらず、比較的前の席だったので充分に楽し
むことができました。 しかしながら席が半分も埋まっていなかったのはとても残念に思いました。
(ホールが大きいから仕方がないのかもしれません)


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