めがね [TV・映画]
穏やかな島の風景の中にゆっくりと流れる時間。
事件らしい事件も起きず、きのうときょう の区別さえあいまいになりそうな不思議な世界。
それでも時は静かに流れていて。そしてすべてがゆっくりと気づくのを待ってくれている。
「体操一緒にやりませんか」「氷ありますよ」 と声はかけるけれど無理強いはしない人たち。
どんなふうにたそがれるのか、どんなふうにたそがれたいのか、それは自分が決めること。
自分の中の声を聞くのはむずかしくて、けれどそれができた時自由になれるのかもしれない。
硬かったタエコ(小林聡美)の心が戸惑いながらもゆっくりとほどけていく様に見ている方も肩の力が
ほっと抜けるような思いがするがそれはとりも直さず、自分も「たそがれる」ことからはるか遠いところ
にいるということなのかもしれない。
外に開かれた食堂で一緒に食べるごはんとサクラ(もたいまさこ) が作るカキ氷が重要なモチーフで
「かもめ食堂」と同じように食べ物がどれもとてもおいしそう。そして誰かと一緒に食べることは幸せに
つながっているんだということも。無言でエビにむしゃぶりつく5人の姿がおかしい。
それでも旅には必ず終わりがやってきて
帰ってゆく人、残る人…そして…また戻ってくる人
この風景の中で生きるも良し、ここを拠り所としていつかまた戻ってくるために元の場所 で生きる
のもまた良し。
細かい部分の説明をするわけでもなければ、何が一番だよと答えを出すわけでもない。
見た人がそれぞれに感じたことが答えで、そのどれもがすべて「良し」なんだ。 そう思える映画。
島の風をふわりと感じられるような、そんな1時間45分です。
そして旅にでたくなるかもしれません。
私は編み物がしたくなりました…